※下記作品の一部を販売しております。詳しくは「原田工房/作品販売のページ」をご覧くださいませ。
※大型画につき、縮小した複写図を掲載しているため、画像が大幅に粗くなっていることをご了承ください。
【十二神将のこと ~新薬師寺さんの十二神将を彫ろうと思ったきっかけ】
1994年にわたし(原田)の師匠である田中一光氏より、師匠の故郷である奈良市が主催する「奈良町格子の家」にあるギャラリーで個展をすすめられ、そこで個展を開催したときのこと。
「奈良ホテル」に一泊した翌日、とにかく暑い暑い夏空の下を春日大社から新薬師寺まで歩いて行ったのだが、どうやら熱中症になってしまったらしい。
新薬師寺の十二神将さんと薬師如来さんのある御堂についたときは息もたえだえで、見かねた御堂の係の方が、そのなかで座りこむことをゆるしてくださった。
一時間ほど十二神将さんに見守られながら休んでいると、なぜかスッと元気になることができ、まるで十二神将さんがもつエネルギーをわけ与えてもらったかのように感じられて胸がいっぱいとなり、これを彫ってみよう、と思いたったのだった。
版画としては大きな作品にしたくて、各神将さんを天地55㎝くらいの大型画にしてみた。
そんな体験や思いが込められてできあがったのが、この「新薬師寺十二神将図」である。
このシリーズは、1993年、スリランカの仏歯寺にて個展を開催するために「IMAGE OF BUDDHA IN SRI LANKA」(スリランカの仏陀像)というテーマで創作したときのもの。
じっさいにスリランカに何度も足をはこび、ナマの仏像を見てまわり、妥協することなく、細部にいたる仏陀像の再現や仏陀がもつ世界観のイメージを表現することにつとめた。
現在でもつよい思い入れがあり、自信作のひとつでもある。
当時のエピソードをひとつ.....
湯布院の観光関係者の皆さんから「湯布院の景色を版画にして、由布院駅アートホールで個展をひらく」という課題をいただいて、下調べのために彼の地をたずねたが、これはすぐに、どエライ難題だと気がついた。
しかし、素晴らしいおもてなしとご期待をいただいて、いまさらあとには引けず課題をもったまま帰京。
一年間苦しみぬいてなんとか版画にしあげたものの、墨一色で景色を表現しなければならないため、どうしても絵にならないものもあったりして、最初に感じたとおり悪戦苦闘の連続であった。
たとえば、狭霧台(さぎりだい)より見た由布院盆地の霧の風景を、墨一色で版画にするのは至難のワザで、この風景のスケッチになやんでいたとき、友人は「真っ白な紙のまんまで額に入れたら」といって笑っていたが、この風景だけは、残念ながらついに画にできなかった。
そんな苦闘のすえに生まれた作品集『木版画~ゆふいん十景』をぜひご覧ください。
福をもたらすとして日本で信仰されている七柱の神が七福神(しちふくじん)である。
七福神それぞれの個性が木版画の味わいを通じてつたわり、このシリーズをご覧になる方にすこしでも福の到来を感じてもらえれば、と願いながら木版を刻んだ。